こんな状況だからこそ

上場企業へのコンサルティング業務とは別に、経営顧問をしているすべての中小企業への近況確認を終えた。

前職を東日本大震災の直後に独立したことや、これまで企業再生の仕事に携わってきたこともあって、顧問先には常々、キャッシュを余分に保有することの重要性を説明してきた。

この重要性は平穏な日常では分からない。

しかし、上場企業に比べて体力の劣る中小企業の場合、数ヶ月事業が止まっただけでキャッシュが底をつき、その結果バタバタと倒れてしまう。

経営者のなかには、「現預金残高に余裕があるので、繰上返済するのはどうでしょうか」とか「借入利息の支払いがもったいない気がするんですが」など言われる方々もいた。
しかし、特にこの超低金利の時代にあっては、「この程度の利息の支払いは何かあったときのための保険料だと思ってください。何かあったときにこの意味が分かりますから」と伝えてきた。

いま、まさにその「何か」が起こっている。

上述の助言の甲斐もあってか、幸いにしてただちに借入を検討しなければならないような顧問先は1社もなく、売上の減少にも比較的余裕を持って対応できているのが現状だ。

コンサルティングは、何かあったときに経営者と同じように想定外でしたではなく、経営者が想定し得ないことを想像して助言することに意味があると思う。

私自身もセミナーが中止や延期になったり、新規案件の開始が後ろ倒しになるなど影響を受けているが、顧問先から「先生の言う通りにしてきて本当に良かった」という感謝の言葉をいただけると、これまでの経験や知識が顧問先の役に立ったと心から嬉しく思う。

まだ新型コロナウイルスの感染拡大の収束が見えないなか、微力ながらも会計士という立場から社会的使命を果たすべく、一社でも多くの会社を業績不振や倒産から救うことに貢献していきたい。