もう3年、まだ3年

尊敬するビジネスパートナーでもあった親友が亡くなって、今日で3年が経つ。

独立してから、これまで彼とは一緒に多くの会社の再生支援を手掛けてきた。

私は財務や事業の専門家、彼は金融機関や経営者、専門家など関係者の取りまとめ役という異なる立場であったが、お互い欠かせない存在であったように思う。

その彼が、「主に中小企業を対象とした支援事業を立ち上げたい」と私に伝えてきたのは7年ほど前のこと。

中小企業の事業再生や経営支援に多く共通していることだが、そういった会社は一般的に上場企業ほど豊富な資金や経営ノウハウ、人材などを有しているわけではない。そのなかで、経営者は誰に悩みを相談していいのかも分からず一人で苦しんでいる。

そんな場面を、彼も私もたくさん見てきた。

彼は新規事業を立ち上げる際、私に「経験やノウハウが豊富なことはもちろんだが、情熱や使命感で動ける公認会計士は私の周りで吉岡さんしかいない。ぜひ力を貸してほしい」と言ってきてくれた。

私も彼を心から尊敬していたし、なにより彼も情熱や使命感を持った人間だったので、「中小企業の再生や成長に貢献できて、また一緒に仕事ができるなら喜んで協力させてもらう」とその場で返答した。

その後は一緒に中小企業の支援を行うなかで、多くの経営者や従業員の方々から喜びや感謝の言葉、笑顔をもらったように思う。

しかしその一方で、会社を再生させるという場面では、相応の痛みが伴うものだ。

つらく厳しい選択を経営者に迫らなければならないこともある。

また、経営者や従業員の方々と顔を合わせながら何度も何度も話を聞き続け、次第に我々に心を開いてくれ始めると、仕事やお金の話に留まらずプライベートや家族の話、将来の夢などにまで話題が広がることがある。

なんとか会社を再生させたいと思って話し合い、深入りすればするほど、そこには情が入り込む余地が生じる。

時間をかけて何十社の支援に成功しても、たった1社が上手くいかなければ、その1社のことが何年経っても頭から離れない。

「あの社長はいま何をしてるんだろう」「従業員の家族は元気にしているのだろうか」

責任感のかたまりであった彼も、そのように思い起こす毎日に相当苦しんだと思う。

医者が患者に感情を入れ込みすぎては体が持たないといわれるように、我々の仕事もまた経営者や従業員、その家族に感情を入れ込みすぎると自分の体を滅ぼしてしまうことになりかねない。

私自身も頭では分かっていても、そんなすぐに切り替えができるほど器用な人間ではない。

情熱や使命感を持って支援にあたるということは、口でいうほど簡単で綺麗なことではないと思う。その裏側では、ときとして自分自身に苦しみの刃が向いていることもある。

いつも思い悩み、疲れが抜けきらない様子だった彼を会食に誘ったのは、暑い夏の夜のこと。

大笑いしながら飲んで食べて楽しんだ、その2ヶ月後、彼は早すぎる生涯を終えた。

私はその連絡を、ちょうどセミナー講師の仕事が終わって一息ついていたときに聞いた。

事前に話は入っていたが、動揺するといけないからと私には伏せていたらしい。

近しいものの死は、人を驚くほど無力にさせる。その解決は時間に委ねるしかないと思う。

もう3年、まだ3年。

「案件の数より中身が大事。1社1社の支援に全力を尽くす。」

彼がよく口にしていた言葉を胸に、これからも経営者や経理担当者への支援を続けていきたいと思う。