国際会計基準審議会(IASB)は11月24日、国際財務報告基準(IFRS)におけるのれんの会計処理について、のれんを定期償却せず減損のみのアプローチを行う現行のルールを維持することを議決しました。
本年5月の時点で、のれんの償却処理については今秋にも採決するということでしたが、現行ルールを継続するという結論に至ったことで、ようやくのれんに関する議論もこれで一段落といったところでしょうか。
新聞などでのれんの会計処理に関する議論が世間を賑わすたびに、「のれんの会計処理は非償却に落ち着くだろう」という私見はこれまで何度も投稿で述べてきました。
私がそう考える理由についても、本年5月に投稿した記事「IFRS「のれん」の会計処理、今秋にも採決へ」のなかで詳細に記載しています。
ですので、ここで改めて詳しく私見を述べるつもりはありません。
ただ、私自身はまだ日本でIFRS適用が数社の頃から導入支援を行ってきたという自負もありますし、その頃からIFRSの書籍を読みあさり、各基準の枝葉だけではなくIFRS自体の根本となる考え方を学び、大学院での教壇にも立ってきました。
理論面を教える立場と、それを実務にどう落とし込むかという現場。その両方のバランスを図りながらIFRSに携わってきた立場から思うことを簡潔に書くと、まず「理論的」には償却にも非償却にも採用根拠に一理ある。しかし、現行の非償却処理をひっくり返すほどの新しい説得力のある理由が償却処理には最後まで生まれてこなかったように感じます。
また「実務的」には、のれんの会計処理方法を変えなかったというよりも変えられなかったという側面も強いのではないかと思っています。
(変えた場合の企業の実務負担や財務諸表数値に及ぼす影響の大きさはもちろん、追加的に必要となる検討事項(詳細は2019年の投稿「IFRS、のれん償却に係る議論の現状」に記載)も非常に多岐にわたります。)
今後はのれんについては、開示面の議論に話題が移っていくと思いますが、実務に携わる私としては、予測通りに落ち着いたとかどうこうよりも、一定の結論が出て会計処理方針が明確になったというのが一番ありがたい。
これでちょうど来週からまた新たに始まるIFRS導入支援の現場でも、のれんの会計処理について胸を張って説明ができそうです笑