IFRS導入プロジェクトで常に意識してほしいこと

私が初めてIFRS導入プロジェクトに関与したのが2011年。上場会社および上場準備会社を含めて、これまで数十社のプロジェクトに参画してきました。

当初から「ゴール逆算方式」を掲げ、プロジェクトのゴール、つまりIFRSベースの有価証券報告書の作成に必要な作業のみを逆算して行うことで、なるべく会社様の作業やコストの負担を減らして効率的に導入を進めるべく支援してきました。

あれからおよそ10年が経過し、適用会社数も順調に増加傾向にある一方で、セカンドオピニオンの依頼や導入途中の会社から相談依頼などを受けると、今でもゴールに直結しない作業を行っているなと感じる会社が多く見受けられます。

・プロジェクト途中での監査法人への報告用として、パワーポイントで数十枚の報告書を複数回作成している。
・日本基準とIFRSの差異のチェックリストとは別ファイルで、差異のサマリー形式のファイルを作成している。
・IFRS報告日までに自社グループで発生する可能性がない論点について、将来的に発生する可能性があるという理由で検討を行っている。

上記事例のような資料作成および検討は、IFRSの有価証券報告書を作成するというゴールにたどり着くために必要でない業務であるとともに、会社にとっては無駄な作業時間やコストの負担が生じてしまいます。

過去に相談を受けたケースでは、「(ゴールに直結しない)複数の資料を作成したが、各ファイルが自動でリンクしておらず手動で更新していたため、一つのファイルを修正した際に別ファイルの更新が漏れていた。結果的に、作業用ファイルと報告書の内容が不一致となっており、どちらが正しいのか担当者も分からず現場が混乱した。」ということがありました。

数多く資料を作成すれば良いってもんじゃありません。むしろ、必要のない資料の作成は百害あって一利なしです。

資料や報告書の作成に取り掛かる前に、本当にそれがゴールにたどり着くために必要な作業か、最終的には必要のなかった無駄な作業となる可能性はないか、をぜひ考えてみてください。

そして、考えてもその作業の必要性がわからなければ、監査法人やコンサル会社にその作業を行う必要があるのか、省略可能かを確認しながら、ゴールに向かって進んでいただきたいと思います。