IFRS、のれん償却に係る議論の現状

昨日12月14日付けの日経新聞で、IFRSでのれん定期償却の導入論が熱を帯びている、という旨の記事が掲載されています。

のれんの償却についての私見は、以前に「IFRSで、のれんが償却になる可能性は?」でも書きました。

たしかに、のれん償却に賛成という声は、私が書いた当時より増加している印象ですが、現状の個人的な見解は従前と変わりなく、のれん非償却に落ち着くのではないかと考えています(こういう新聞記事が出るたびに、メールや問い合わせが増えます。。。)。

この点、ちょうど先月末にIFRS設定主体であるIASBの担当者から、のれん及び減損プロジェクトに関して話を聞く機会がありましたので、その際に聞いた現状のIASBの見解を以下に纏めてみます。

・投資家にとって企業結合に関するより有用な情報を、企業が合理的なコストをもって提供できるかどうかを検討する。
・2020年2月にディスカッション・ペーパーを公表する予定だが、のれんの償却を再導入するということではなく、2つの見解(償却と非償却)を提示する。
償却処理に変更するだけの十分な根拠があるのか。また、変更により生じるコストや混乱を上回る便益があるのかを検討する必要がある。
・ゼロから検討しているのではなく、非償却からスタートしている。過去の議論の繰り返しではなく、新しい情報が欲しい。

特に上記のうち3つ目の点は、私も以前の記事で書いたように変更にあたっての大きな壁だと考えています。

そして、もし仮に償却に変更となった場合、今度は「償却年数を何年にするのか」というだけでも以下のような検討事項が必要となり、その決定には更に深い議論が求められるでしょう。

  • 基準上で償却年数を規定するのか、あるいは経営者の判断に委ねるのか。
  • 基準で規定する場合には、唯一の年数とするのか、あるいは一定のレンジ(15年以内など)を許容するのか。
  • 経営者の判断に委ねる場合には、決定根拠や拠り所を何に求めるか。決定した償却年数から恣意性を排除できるのか。監査法人は償却年数の妥当性をどのように調査・検討するのか。
  • 業種や規模などにより、償却年数を別個に設けることを検討する余地はあるのか。
  • IFRSと米国基準で共通化が図れるか。

その他にも減損テストの頻度はどうするのかなど、検討課題は山積みです。

IFRS導入の実務に多く携わってきた経験から私見を述べると、償却および非償却を検討する際には、ゼロベースではなく、すでにIFRSの実務上は非償却で処理が行われていることをまずは念頭に置いたうえで、理論的な優劣のみでなく、変更時の実務的な影響にも目を向けて検討する必要があると思います。