有給休暇引当金を算定する際の検討事項を整理してみた

日本基準にはなく、IFRSで計上が求められる代表的な論点の一つが有給休暇引当金です(他にも未払有給休暇や有給休暇債務などの呼び方がありますが、今回は有給休暇引当金で統一します)。

有給休暇に関する規程が当然のように存在している現在では、IFRSを適用する際にあたって避けて通れない論点といえるでしょう。

この有給休暇引当金は、一般的に以下の計算式で求められます。
有給休暇引当金=日給×有休残日数×消化率

計算式自体はそれほど難しいものではありません。

しかし、いざ実務で算出しようとすると、計算式の構成要素ごとに様々な検討を求められるのがこの論点であり、頭を悩ませている経理担当者の方々も多いと思います。

IAS第19号「従業員給付」や解説書を読んでみても、その大半は退職給付に関する記載であり、私も導入支援を始めた頃は有給休暇引当金に関する具体的な事例の少なさに「おいおい、これだけかい。。。」と頭を悩ませた記憶があります(まぁ日本におけるIFRSの適用事例がまだ数社の頃ですから、やむを得ないのですが。。。)。

その後、私自身が多くの企業と一緒にIFRS導入を進めてきたなかで、その経験をもとに実務上の検討事項としてどのようなものがあるのか、計算式の構成要素ごとに一例を記してみます(明確に区別しづらいものも便宜的に分けています)。

■日給
・個人別に求めるか、グループ単位で求めるか
・グループ単位の場合はどのような根拠に基づいてグループ分けを行うか
・日給の範囲をどこまで含めるか(法定福利費、割増賃金、各種手当、賞与など)

■残日数
・翌期に付与される日数を反映させるか
・傷病休暇などの特別休暇をどのように扱うか
・会計期間開始日と有休付与日が異なる場合の日数をどのようにカウントするか

■消化率
・個人別に求めるか、グループ単位で求めるか
・グループ単位の場合はどのような根拠に基づいてグループ分けを行うか
・どの期間の消化率を使用するのか(過去実績を用いる場合、直前期など1期間とするか、あるいは3期間や5期間などの平均値を採用するか)
・中途入社や退職予定者の消化率をどう扱うか
・日本の会社の場合、5日間の有給休暇取得義務をどう反映させるか
・期限切れを迎える有給休暇日数の買い取り制度がある場合、計算式にどう反映させるか
・繰越分と当期付与分で分けるか、あるいは一本で計算するか

■全般
・対象範囲は正社員のみとするか、あるいは嘱託社員や契約社員、パート、アルバイトなども含めるか
・有給休暇の消化を先入先出法で考えるか、後入先出法で考えるか
・構成要素ごとの算定方法が決まったとして、算定に必要なデータは入手可能か
・IFRS適用後、四半期あるいは期末ごとに算定することが実務上可能か

ざっと思いつくかぎり書いてみましたが、これ組み合わせたら何パターンあんねん?って感じですね。

上記の項目ごとに、自社が採用する方法およびそれを採用するための理論武装を検討する必要があります(実際、私もこれまで様々な組み合わせで理論武装を支援し、会社の方針を決定しています)。

また、基本的には状況の変化などがないかぎり、IFRS導入時に決定した方法に基づいてその後も四半期あるいは期末ごとに算定を行うことになります。

構成要素ごとにどの方法を採用するかによって、有給休暇引当金の計上額が大きく変わる会社も多いでしょう。特に、簡便的な算定方法が採用できないかといった重要性の判断は、計上額だけでなく導入後の作業負担を大きく左右するポイントといえます。

計算方法の決定にあたっては、数値のみでなく今後の作業負担なども見越して、ぜひ慎重に検討を重ねてください。

それぞれの構成要素で実際にどの方法を採用している会社が多いか、どのように理論武装すべきかなどの詳細までは今回書ききれませんが、私自身も有給休暇引当金は非常に相談を受けることが多い論点です。

今回の投稿が、検討事項の整理を進めようとしている担当者の皆さまのお役に立てば嬉しく思います。