帝国ホテルのサービスアパートメント事業を考える

誰もが知る、あの帝国ホテルがサービスアパートメント事業を開始するということが先日話題となりました。

その内容や想定する利用客、決断の背景などを軽く考えていきたいと思います(詳細な会計的分析ではありません、念のため)。

部屋の間取りは数種類あり、一番小さい31㎡の部屋で月額360,000万円(サービス料・消費税込)から滞在できるようです。

単純に部屋の広さと金額を比較すると、割高のように感じるかもしれません。

しかし、あの帝国ホテルに住めるという贅沢感や立地の利便性に加えて、専属サービスアテンダントによるサポートを受けることができる。また、駐車場やホテルのフィットネスセンター、プールも無料で利用可能とのこと。

ロビーラウンジでコーヒーや紅茶も無料で飲めるようで、これらを考慮すると金額以上の価値があると考える人も多くいるのではないでしょうか。

一方のホテル側にとっても、宿泊業は固定費割合の大きい業種であり、稼働率の向上は利益確保のための非常に重要なポイントといえますので、多少の無料サービスを付加しても空室削減や安定稼働のメリットは大きいと思います。

私自身も今後の居住スタイルを検討するにあたって、「そりゃそうだよね」ということも含めて、気になった点をいくつか聞いてみました(相変わらず、最高レベルの電話対応ですね)。

・2月1日に予約が開始され、99室すべてがすでに満室になった
・現在は本年3月15日から7月15日まの4ヶ月間を利用の対象としており、それ以降どうするかは検討中
・住民票を移すことはできないが、郵便物の受け取りは可能
・完全な引っ越しというより、サードプレイス的な利用を想定している
・法人登記はできず、部屋への頻繁な来客があるようなオフィス利用も想定していない

電話を終えて最初の印象としては、ホテルに住めるとはいえ、ベースはやはりホテル。

上述のように完全な移住は前提とされていませんし、長期間滞在すると住まいとしてはもの足りないと感じる人も出てくると思います(キッチンがなく自炊は難しい、洗濯機や電子レンジは共同スペースを利用など)。

現実的な使い方としては、現状の住まいは維持したまま、テレワークや読書など気分転換としてのサードプレイス、地方在住者の二拠点生活先あるいは数カ月間の都内出張時の宿泊先などでしょうか。

コロナウイルス感染拡大の影響で宿泊業が大きなダメージを受けているのは周知の通りですが、その際に「空き室を賃貸に転換するホテルが出てくるのではないか」と個人的に予想はしていました。

そして、それを帝国ホテルがやってきた。

簡単な決断ではなかったと思います。

しかし、この外部環境の変化への適応力、迅速な決断力こそが100年以上にわたる歴史を築いてきた帝国ホテルの強みなんだと思います。

今回の事例をきっかけに、追随するホテルも出てくるかもしれませんね。