IFRSを適用すると、日本基準の連結財務諸表の作成は不要になるのか?

拙著「先行開示事例から学び取る IFRS導入プロジェクトの実務」にも書いたように、IFRS導入に関するプロジェクトの現場やセミナーで、「IFRSを適用した場合には、従来の日本基準に基づく試算表や連結財務諸表を作成する必要はないのですか?」という質問をよく受けます。

この点、一部のグローバル企業の中には日頃からIFRSに準拠した会計処理で記帳を行い、そのまま直接的にIFRSに基づく連結財務諸表を作成している会社もあると思われます。

しかし、IFRSを適用した場合でも、法人税申告書の作成など税務業務は従来通り求められることから、これに対応するにはIFRS適用後も日本基準の試算表や連結財務諸表を作成しておくことが望ましいといえるでしょう(申告書作成にあたっては、日本基準をベースとした方が別表調整などの作業負担が軽減されるのが一般的です)。

また、派遣社員やパートの方々を含めた、すべての経理担当者がIFRSを理解したうえで正確に記帳を行うことは難しいといえます。

そのため、私が参画しているプロジェクトでは、IFRS適用後も日本基準に基づいて記帳や試算表等の作成を行い、従来通り日本基準をベースとした連結財務諸表を作成するという流れは変わりません。

そして、日本基準の連結財務諸表からIFRSに基づく連結財務諸表に数値を置き換えるための組替仕訳を入れることで、IFRSベースの連結財務諸表を作成するという方法を採用しています。

方法はいくつか考えられると思いますが、初度適用における調整表なども考慮すると、個人的には上記の流れが好ましいと考えています。

以上、実務担当者の皆さまの参考になれば嬉しく思います。