リース契約オンバランス時の実務上の留意点

本日3月8日の日経新聞一面で、日本基準においてもIFRSと同様にリース取引がオンバランス処理される旨の記事が掲載されています。

現行の日本基準ではリースはファイナンス・リースとオペレーティング・リースに大別され、オペレーティング・リースに該当するリース取引は賃貸借処理されます。

一方、IFRS第16号(リース)では借手のファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分が廃止され、使用権資産としてすべてのリース取引をオンバランス処理することが原則として求められています。

オンバランス処理が求められる趣旨や具体的な会計処理は参考書籍が書店にも並んでいますので省略しますが、現在複数の会社でIFRS導入支援を行っている私の立場からは、これまで経験に基づいたリースに係る実務上の留意点を以下に記載したいと思います。
(日本のリース基準もIFRSに収斂されると思われることから、日本基準を採用している会社担当者の方にも参考になれば幸いです)。

・リースの範囲(リース会計の対象か否かの判断)
IFRSでは、そもそもの契約がリース又はリースを含むか否かの判断を行う必要があります。
対象資産が識別され特定されているか、資産の使用を借手が支配している(指図する権利を有している)かが判断にあたってのポイントとなります。実務上は、「識別」「特定」「支配」といった点を中心にリースの範囲に含まれるか否かを判断し、監査法人と協議を重ねることが多いという印象です。

・リース期間の決定
借手側の解約不能期間に加えて、リースを延長・解約するオプションの対象期間も考慮する必要があります。
例えば、リース物件について解約不能期間は何年か、延長オプションの行使が合理的に確実かなどを考慮することになります。特に本社オフィスや、小売業・飲食業などが有する数多くの店舗がリース対象となる場合には、金額的影響も大きくなりがちなことから、オプション行使の合理性について慎重に検討を進めています。

・割引率の決定
従来オペレーティング・リースとして賃貸借処理されていたリース契約が、IFRSではオンバランス処理されます。その際、リース負債は未払いリース料の割引現在価値で計上されることから、事前に割引率を決定しなくてはなりません。
通常貸手の利回り情報は入手困難ですので、借手の追加借入利子率を採用することが一般的だと思いますが、現在の超低金利下では割引率が限りなく低く、その結果オンバランス処理に伴って負債計上額が想定よりも大きくなるケースが出てくる点は留意が必要です。

・重要性の判断
IFRSでは短期リースや少額資産についてはオンバランスせず、賃貸借処理が認められています。もっとも、具体的な金額的重要性の判定については、各社ごとに社内ルールを整備する必要があります。

IFRS導入支援時のリースに係る論点では、従来の日本基準に比べて上記の点を中心に検討・判断する機会が多くなり、監査法人との協議も増える傾向にあるという印象です。


上記以外にもリースには様々な論点や検討事項が存在していることから、IFRS導入を進めている会社はもちろん、日本基準を採用している会社も、早めにリース契約の洗い出し、オンバランスにあたって必要情報が入手できるかなどの確認を進めていくことをお勧めします。
(私の経験では、特に海外子会社を多く有している会社では情報の入手可能性や網羅性において負担が大きくなることが多いですね。。。ご参考までに!)