最新IFRS適用状況(2023年6月末)

さて、本年もこの季節がやってまいりました笑

7月24日に東証から「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の分析資料が公表されましたので、2023年6月末時点のIFRS適用状況を本年もまとめてみました。

まず、2014年6月末以降のIFRS適用会社数(適用決定会社及び適用予定会社を含む)の推移は、以下の通りになります(東証HPより筆者作成)

2023年6月末のIFRS適用会社数(適用決定会社及び適用予定会社を含む)は前年から10社増加し、274社となりました。

次に、2023年6月末時点のIFRS適用会社274社を業種別にグラフ化したものが以下になります(東証HPより筆者作成。棒グラフが適用社数(左軸)、折れ線グラフが各業種内の母集団に占める適用会社の割合(右軸)を示している)。

適用業種は33業種中28業種であり、前年と同じとなっています。業種間で会社数に偏りが見られるのもこれまでと同様ですね。

情報・通信業やサービス業、電気機器で適用が多い一方で、銀行業や海運業などは未だ1社も適用なし。海運業やパルプ・紙で適用がないのは不思議だと前年も書きましたが、一年を経ても適用はありませんでした。

また、各業種内の母集団に占める適用会社の割合を示した折れ線グラフを見ると、ゴム製品と医薬品がいずれも20%台後半と、およそ4社に1社が適用している状況です。次いで、保険業と輸送用機器が20%台で続きます。

2023年6月末までの1年間は、上記のような適用実績となりました。

過去からの経緯を私見を交えて述べておくと、2015年から2019年までは毎年30社前後のペースで増加し、2020年と2021年はコロナの影響もあってかいずれも9社の増加に留まったものの、2022年6月末までの一年間は21社の増加に回復。そして今回の2023年6月末までの一年間は10社の増加に留まりました。

一見、ペースは鈍化したように思いますが、IFRSを適用して新規上場した会社はこの一年で7社と、これは過去最高のペースになります。

そのため、IFRS適用は上場企業のなかでも規模の大きい企業からより小さな規模の企業へと移行し、IFRS導入に前向きな企業については概ね適用が完了して一段落。そして、近年は新規上場企業に裾野が拡大してきたと捉えることができるのではないでしょうか。

ちなみに私自身が行っているIFRS導入支援社数は、この一年間もこれまでと大きく変わっておらず、(前段でいう規模の大きい企業が中心にはなりますが)現在も継続してIFRS導入支援を実施していることからも、肌感覚で大きな変動はありません。

IFRS導入に前向きな企業については概ね適用が完了し、しばらくは落ち着きを見せるのか。あるいは昨年秋にのれんの処理に関する方針が概ね固まったことなどを受け、再度増加幅が拡大するのか。来年以降も適用会社数については注視していきたいと思います。

なお、近年はリモートと出社を交えたハイブリッド形式での打ち合わせが増えています。

そのような環境下で、無駄なコストや作業を省き、効果的かつ効率的にIFRS導入を進めたいと考えておられる担当者の方々は、弊著「先行開示事例から学び取る IFRS導入プロジェクトの実務」(中央経済社)をぜひ参考にされてみてください。