なぜ四半期開示を見直すのかを明確にすべき

岸田新総裁のもと四半期開示の見直しが検討されているようですが、その一方で機関投資家を中心に四半期開示の必要性を訴える声も依然大きいようです。

「四半期開示を止めれば外国人投資家が資金を引き上げる」、「四半期の業績推移は投資のための有用な情報だ」、「四半期開示を減らすと情報格差が広がってしまう」などなど。

たしかに機関投資家らの立場からは、このような声が上がるのももっともだと思います。

一方で、開示支援を行っている立場から述べると、四半期開示を行うことによる経理担当者らの作業負担の増加も無視できないと思っています。

以前の投稿「新総裁誕生、四半期開示の見直しなるか!?」でも書いたように、開示資料は経理担当者を中心に何度も入力と修正を繰り返して、やっと完成するものです。

このように一つの開示資料を作成するだけでも大変な実務負担であるわけです。四半期ごとに複数の開示資料に同じ数字を入力・修正するという作業が、果たして本当に経理担当者のやるべき仕事なのでしょうか。企業にとって付加価値を生み出しているといえるでしょうか

特に四半期では、短信と有報は数日か一週間程度の差で公表されているケースも多く、これらを別々に作成する意義があるのか。個人的にはこちらの問題が大きいと思っています。

私は経理担当者の本質的な仕事とは、領収書の整理や伝票入力ではなく、意思決定を行うにあたっての重要な財務情報を経営者に提供することだと思っています。

それによって、会社はより投資効率の良い意思決定を行うことができ、結果的に会社の業績拡大や事業の成長につながる可能性が高まります。

四半期開示自体が無駄だとは言いません。

しかし、現状のまま四半期開示を続けるにしても、複数の開示資料に同じ数字を入力するような時間は明らかに本業に向けるべき時間を奪っており、会社の成長を妨げることにつながるということも忘れてはならないと思います。

これも以前の投稿「新総裁誕生、四半期開示の見直しなるか!?」で書きましたが、四半期開示を見直すとした場合に、四半期開示自体を廃止するという方法だけではなく、短信と四半期報告書を一体化するなどの方法も考えられると思います。

このような方法を採用することで、機関投資家の声にも配慮しながら、現場の作業負担も減らすことができるのではないでしょうか。

いまは四半期開示を続けるか廃止するか、という議論が先行しているように感じます。

まずはどうして四半期開示を見直すのかという目的を明確にする。四半期開示の見直し自体は目的ではなく、あくまで手段だと思います。

「長期的な視点に沿った経営が大事だから四半期開示を見直しする」では、じゃあ短期目線の四半期は廃止しようという方向になりがちだと思います。これだと冒頭で述べたような反対論が大きくなるのもやむを得ない。それよりも、「経理担当者が会社の投資意思決定に有用な情報を提供することによって、企業価値を向上させることが大事だから四半期開示を見直しすべき」という観点から議論すれば、じゃあ開示資料を一元化したり、簡略化しようという方向で検討が進むのではないでしょうか。