ニデック株式会社が分配可能額を超えた中間配当等を実施

東証プライムに上場するニデック株式会社(旧日本電産)は6月2日、「分配可能額を超えた前期の中間配当金、並びに前期の当社株式取得について」というニュースリリースを公表しました(以下、ニュースリリースより一部抜粋)

当社は、2022年10月24日開催の取締役会において、一株当たり35円の配当(以下「本件中間配当」といいます。)を行うことを決議し実施しましたが、今般、2023年3月期の分配可能額の精査を行う過程において、本件中間配当は、結果として会社法および会社計算規則により算定した分配可能額を超過していたことが判明しました。
また、その後の調査において、2022年9月1日以降2023年3月31日までに信託契約に基づき信託銀行が実施した当社株式の取得についても分配可能額を超過していたこと、当社の会計監査人であるPwC京都監査法人も分配可能額の超過を、見落としにより、指摘できていなかったことが判明しました。

中間配当および当社株式取得が分配可能額を超過していたという内容とともに、会計監査人であるPwC京都監査法人も、分配可能額の超過を見落としにより指摘できていなかったという記載があります。

会計監査人にも責任がある旨のコメントがここまで明記されているのは珍しいと思い、会計監査人側がどう主張するか気になっていると、その翌日に会計監査人側から以下のコメントがリリースされました。

PwC京都監査法人は、ニデック株式会社が2023年6月2日に公表した「分配可能額を超えた前期の中間配当金、並びに前期の当社株式取得について」の記載を事前に認識しており、その記載と相違はありません。本件を受け、弊法人は今後、必要な対応を行ってまいります。

ということで、まさかの全面受け入れ。。。会計監査人側も分配可能額の超過を見落としにより指摘できていなかった事実について、記載と相違ない旨を公表しました。

以前、私の投稿「欠損填補を目的とした科目の振り替えは慎重に!」でも記載しましたように、株主資本内での科目振替や分配可能額の算定は会社法により制限が加えられているにもかかわらず、名だたる上場企業でもその計算方法を誤ってしまうケースが散見されます

今回起きた事象も、おそらく意図的なものではなく、計算ミスである可能性が高いと個人的には思っています。

だからこそ、ここは誤りが生じやすい論点だということを会社や会計監査人が事前に把握・共有していれば、今回のような計算ミスは起きなかった、あるいは事前に発見できた可能性が高いのではないでしょうか。

上記の投稿でも記載しましたように、分配可能額の算定や欠損填補を目的とした科目の振り替えなど、株主資本に関する処理は意外とミスが起こりやすい論点でもあります。

他の会社も決して他人事ではなく、多少のコストを支払ってでも専門家に算定やチェックを依頼するなど、くれぐれも慎重に進められることをお勧めします。