12月2日、関西学院大学の名誉教授で、関西学院理事長の平松一夫先生がご逝去されました。
平松一夫先生を初めて知ったのは、2011年。
私が独立して間もなく、とある上場企業のIFRS導入支援の依頼を受けた頃です。
まだ日本におけるIFRS適用会社が5社程度と非常に少なく、国内の先行適用事例を参考にしたくても非常に数が限られている状況でした。
また、周りにIFRS導入支援を経験しているような専門家も見当たらず、参考にできる書籍も今ほど充実していません。
そんな困り果てていたときに出会ったのが、ちょうど同時期に出版された平松一夫先生の書籍「IFRS国際会計基準の基礎」(中央経済社)でした(最新は本年に出版された第6版)。
ワラにもすがる思いで、書籍がボロボロになるまで無我夢中で読み込みました。
「まだ日本でのIFRS適用事例が数社しかないのに、これほどの内容が書けるものなのか。。。」
その後、IFRS強制適用が先送りされ、国内のIFRS適用の波が落ち着きを見せはじめますが、平松一夫先生は上記書籍の改訂版を次々と出版されます。
私自身も2011年から様々な会社でIFRS導入支援を経験するようになり、気づけば多くのIFRS導入支援を経験した数少ない会計士となっていました。
「平松一夫先生が学者の立場で出版されているのであれば、私は実務家の立場でIFRSの普及に尽力することで、少しでも困っている経理担当者の役に立ちたい」との思いで、私も2015年に「先行開示事例から学び取る IFRS導入プロジェクトの実務」(中央経済社)を出版することができました。
何度も心折れそうになりながら半ば使命感のようなもので書籍を書ききることができたのは、平松一夫先生の書籍に出会って、立場は違えどIFRSの理解・知識を国内に普及させようと尽力された思いを、私も共有できたからこそだと思っています。
平松一夫先生の書籍に出会っていなければ、今の私はありません。
いまでも2011年に購入した第1版第1刷は、初心を思い出すため時折読むことにしています。
大きな感謝とともに、ご冥福をお祈りします。