「先行開示事例から学び取る IFRS導入プロジェクトの実務」を振り返る

ちょうど6年前の今日、「先行開示事例から学び取る IFRS導入プロジェクトの実務」(中央経済社)を出版しました。

当時はまだIFRS適用企業は50社前後だったと記憶しています。

2011年に強制適用が見送られ、一時は新聞や雑誌などを賑わしていたIFRS導入の流れは穏やかになっていましたが、水面下では着々と導入に向けて動いていた企業も一定数存在していました。

継続して導入支援を続けていた私が現場で良く聞いていたのは、「IFRSの内容は基準を読んで概ね理解できた。しかし、どうやって有価証券報告書の作成までたどり着けばよいのかが分からない」という声でした。

私もすでに何社も導入支援を行っていたものの、少人数の体制で支援を続けていたため、同時に多くの企業を支援することは難しい状況でした。

「IFRSの強制適用が見送られたことで市場は非常に狭くなっている。しかし、導入を考えていたり、すでにプロジェクトを進めている会社もあり、なんとかその困っている担当者の方々に自分の経験を伝えられないものか。。。」

ちょうどその頃は、中央大学の大学院で教鞭をとっていました。

そのこともあり、教育と実務を経験している立場から、「理論的だが絵に描いた餅にならず、フォーマットも開示して実務で使える参考書を書けば、困っている人たちの助けになるかもしれない」という思いを強く抱くようになった記憶があります。

とはいえ、内心ではIFRSというニッチな市場で爆発的に書籍が売れるとも思っておらず(すみません、編集長。。。)、どちらかというと、一度にたくさん売れて消えていくよりも、細くでもいいから長く売れ続けてほしいという思いを持ちながら、平日の仕事終わりや休日に喫茶店にこもって書きあげたのを思い出します。

このような販売部数の見込めない、非常にニッチな市場をターゲットにした企画で、それでもGoを出してくれた編集長のS氏には今でも感謝しかありません。

共著の武田雄治先生とは、支援の現場や執筆、プライベートでもご一緒させていただき、ありがたみでございます。

そして毎日たくさんの本が出版されているなかで、今でも棚に置いていただいている書店にも心から感謝です。

出版から6年経って、いまでは新たなファイルやタスクを追加したり、進め方をアレンジしていますが、根本は変わっていません。

これからもIFRS導入で困っている皆様のお役に立てば、嬉しさ百倍でございます。