企業会計基準委員会(以下、「ASBJ」という)は12月25日、「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」を公表しました。
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本年3月31日の収益認識基準の改正後、電気事業連合会と一般社団法人日本ガス協会から、立て続けに検針日基準を代替的な取り扱いとして認めてほしい旨の要望が寄せられていました。
検針日基準は、毎月、月末以外の日に実施する検針による顧客の使用量に基づき収益計上が行われる基準です。
上記の要望を受けて、ASBJが検針日基準をどのように扱うのかが焦点となっていました。
今回の公開草案においては、検針日基準による収益認識を認めた場合、財務諸表間の比較可能性を大きく損なわせないとは認められないと判断し、会計基準の定めどおり、決算月に実施した検針の日から決算日までに生じた収益を見積ることが必要であるとの結論に至ってます。
ただし、決算日時点での販売量実績が入手できないため、見積りと実績を事後的に照合する形で見積りの合理性を検証することができないなど、見積りの適切性を評価することが困難であるとの意見が財務諸表作成者及び監査人から寄せられたため、見積方法について財務諸表間の比較可能性を大きく損なわせない範囲で代替的な取扱いを定めることとしています。
この代替的な取扱いとしては、以下のような使用量と単価の見積方法が記載されています。
・使用量について
決算月の月初から月末までの送配量を基礎として、気温、曜日等を加味して見積ることが考えられるが、気温、曜日等を加味することは実務的に困難である可能性があるため、その月の日数に対する未検針日数の割合に基づき日数按分により見積ることができることとした。
・単価について
電気事業及びガス事業では、契約の種類、使用量、時間帯等によって単価が変動する料金体系を採用していることがあり、単価の見積りについては、使用量等に応じて、それらの構成比の変動等を調整することが考えられるが、このような調整を行うことは実務的に困難である可能性があるため、決算月の前年同月の平均単価を基礎とすることができることとした。
つまり、結論としては検針日基準による収益認識は認めず、決算月に実施した検針の日から決算日までに生じた収益を見積る必要がある。ただし、この見積方法について上記使用量と単価の代替的な取扱いを定めたということですね。
本公開草案については、2021年2月25日(木)までコメントを募集しているようです。
なお、今後も実務での適用事例が増加するにしたがって、様々な業界から代替的な取扱いを認めてほしい旨の要望が出てくる可能性は否定できません。
しかし、日本基準特有の代替的な取扱いを認めてしまうほど、IFRS第15号の会計処理とかけ離れた基準になってしまいます。
代替的な取扱いは国際的な財務諸表間の比較可能性を損なわせない範囲でのみを認めていますが、単に比較可能性を担保していればよいわけではなく、それ以外にも会計処理の正当性や論理性、必要性、適用可能性、規定化の容易性などが相当高いレベルで求められると思われます。