夏が来れば思い出す。ということで本年もいってみましょう!
最新IFRS適用状況です。
東証から「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の分析資料が公表されましたので、2024年6月末時点のIFRS適用状況をまとめてみました。
まず、2014年6月末以降のIFRS適用会社数(適用決定会社及び適用予定会社を含む)の推移は、以下の通りになります(東証HPより筆者作成)
2024年6月末のIFRS適用会社数(適用決定会社及び適用予定会社を含む)は前年から10社増加し、284社となりました。
次に、2024年6月末時点のIFRS適用会社284社を業種別にグラフ化したものが以下になります(東証HPより筆者作成。棒グラフが適用社数(左軸)、折れ線グラフが各業種内の母集団に占める適用会社の割合(右軸)を示している)。
適用業種は33業種中29業種であり、前年から「鉱業」の1業種が増加(株式会社INPEX)となっています。
業種間で会社数に偏りが見られるのもこれまでと同様ですね。
サービス業や情報・通信業、電気機器で適用が多い一方で、銀行業や海運業などは未だ1社も適用なし。海運業やパルプ・紙で適用がないのは不思議だと一昨年から書いていますが、今回も適用はありませんでした。
また、各業種内の母集団に占める適用会社の割合を示した折れ線グラフを見ると、保険業が30%を突破。ゴム製品と医薬品がいずれも25%前後と、およそ4社に1社が適用している状況です。次いで、輸送用機器が20%程度で続きます。
2024年6月末までの1年間は、上記のような適用実績となりました。
以下に私見を交えて述べておくと、2015年から2019年までは毎年30社前後のペースで増加し、2020年と2021年はコロナの影響もあってかいずれも9社の増加に留まったものの、2022年6月末までの一年間は21社の増加に回復。そして直近までの2年間はいずれも10社の増加となっています。。
増加ペースは徐々に鈍化しているように思いますが、IFRSを適用して新規上場した会社はこの一年で6社と、これは過去最高水準となります。
そのため、傾向としては昨年と同様、IFRS適用は規模の大きい企業からより小さな規模の企業へと拡がり、近年は新規上場企業にまで裾野が拡大してきたと捉えることができると思います。
そして、私自身が2011年から行っているIFRS導入支援についても、この一年間もこれまでと支援社数は大きく変わっておらず、ほぼ一度も途切れることなく、どこかの企業に対して支援を継続して実施している状況です。
今後の傾向を読むのは難しいですが少し私見を述べておくと、任意適用が継続するかぎり適用社数が著しく増加することはないと思います。
その一方で、日本基準でもIFRSと概ね同じ内容の収益認識基準が適用され、今後はリース基準も改正が見込まれていることを踏まえると、「結局、日本基準で大きな改正が入り、その大半はIFRSをベースに考案されているのであれば、もうIFRSを適用してしまおう」と考える企業も一定数は存在すると思います。
ですので、今後数年は年間10社から20社程度のペースで増加していくのではないでしょうか。
なお、現在でもリモートと出社を交えたハイブリッド形式での打ち合わせを行っている企業が多く見られます。
そのような環境下において、「ゴール逆算方式」により無駄なコストや作業を省いてIFRS導入を進めたいと考えておられる担当者の方々は、弊著「先行開示事例から学び取る IFRS導入プロジェクトの実務」(中央経済社)をぜひ参考にされてみてください。