6月10日の日本経済新聞朝刊に、「M&A効果、開示義務付け 国際会計基準審議会」という記事が掲載されています(以下、記事より一部抜粋)
国際会計基準(IFRS)を策定する国際会計基準審議会(IASB)は同基準の適用企業に対し、M&A(合併・買収)に関する情報開示を拡充するよう要請する。
IASBのアンドレアス・バーコウ議長が日本経済新聞の取材に対し「M&Aについて透明性を向上させ、経営者に説明責任を負ってもらうようにする」と語った。24年にも公開草案を出す。数年後に適用される可能性がある。M&Aに関する情報開示はこれまでのれんの定性的な情報などにとどまっていた。
まず企業が重要とみなすすべてのM&Aについて、実施した年の財務報告書で期待する相乗効果の開示を要請する。売上高やコストなど定量情報の開示が必要になる。
大型買収など経営戦略に重大な影響を及ぼすM&Aについては、より詳細な開示を要求する。買収先企業の売上高や営業利益などが自社の10%を上回るような場合で、M&Aの目的や数値目標などの開示を求める。「買収先の販路を活用して自社商品を売り込み、進出地域で5年後に1000億円の売上高を目指す」といった開示が必要になる。
以前の投稿「IFRS、「のれん」非償却の現行ルールを維持へ!」でも記載しましたように、IASBは2022年11月、IFRSにおけるのれんの会計処理について、のれんを定期償却せず減損のみのアプローチを行う現行のルールを維持することを議決しました。
そのため、外部環境の悪化などにより企業業績が悪化した際には、定期償却している場合に比べて、多額の減損損失が計上されるリスクが高くなります。
今回のM&Aに関する情報開示の拡充は、このようなリスクへの対応策だと思われます。
M&A効果についての開示義務付けは、投資家にとっては企業が考えるM&Aのシナジー効果を定量的に把握するうえで有意義な情報となる可能性は十分にあると思います。
その一方で、IFRS導入や開示の支援を行っている私の立場としては、現場の作業負担の増加をなるべく抑えるという点にも配慮した草案となることを期待したいというのがホンネです。