関西経済連合会が「四半期開示制度の義務付け廃止」に向けた緊急提言を公表

関西経済連合会は4月5日、四半期開示制度の義務付け廃止に向けた緊急提言を公表しました。

詳細はこちらから

結論としては、四半期開示の義務付けを廃止すべきと明記されています。

その理由も書かれていますので、やや長文ですが以下に抜粋します(太字は筆者加工)。

わが国伝統の経営哲学や多様なステークホルダーを重視する世界的な潮流を踏まえると、企業ごとの実態を考慮せず、短期的かつ一律的な財務情報の開示を促す現行の四半期開示制度は、企業経営者や投資家の短期的利益志向を助長しているとの懸念があることから、開示の義務付けは廃止すべきである。
また、ESG投資をはじめサステナビリティ意識の高まりなど、投資家が企業に対して中長期の企業価値向上を見据えた建設的な対話を望むなか、四半期ごとに定型的な開示を求めるような制度が、果たして投資家のニーズに応えているものなのかは、大変に疑問である。投資家・アナリストを公開ランキングなどでクラス分けした場合に、高いクラスにあるとみなされる投資家・アナリストほど、投資に際して四半期開示を重視しない状況においては、むしろ、中長期の視点で企業を評価するような制度を整備し、それに基づき企業の取組みを促す仕組みが求められる。加えて、3カ月ごとの決算開示に膨大な人的資源を投入する現行の四半期開示制度は、人的資源の効率的投入や長時間労働の是正の観点からも問題であると考える。
欧州では2013年に四半期開示義務が廃止されて以降、任意で四半期開示(財務諸表付き)を続けている上場企業は英国やフランスではほとんど存在せず、ドイツでは半数程度との調査結果がある。このように、多くの企業が詳細な四半期開示を取りやめた中、市場経済がそれにより混乱を来したという事実は見受けられない。さらにシンガポールにおいても2020年に原則として四半期開示が任意化された。国際的にこうした動きがあるなか、わが国においても、四半期ごとに、詳細な開示が求められることで上場企業が不利な競争条件に置かれないようにするためにも、四半期開示の義務付けは廃止とすべきである。
現在、四半期開示の見直し議論では、四半期決算報告書と四半期決算短信を一本化し、監査人によるレビューを義務付けるといった議論も見受けられるが、これでは四半期開示の見直しが十分に実現しないものと考える。

開示資料の一本化では四半期開示の見直しが十分に実現しない、と明言されていますね。

見直しの目的が長期的利益志向の重視であることから、開示の一本化よりも廃止という方向に流れているようです。

「高いクラスにあるとみなされる投資家・アナリストほど、投資に際して四半期開示を重視しない」なんて記載は「ほんまでっか!?」と思ってしまいますが、「3カ月ごとの決算開示に膨大な人的資源を投入する現行の四半期開示制度は、人的資源の効率的投入や長時間労働の是正の観点からも問題であると考える」については、私も同意です。

以前の投稿でも書きましたが、個人的には「経理担当者は会社の投資意思決定に有用な情報を提供することによって、企業価値を向上させることが大事。そのために四半期開示を見直しすべき」という観点から議論すれば、無駄な重複作業を求められる開示資料を一元化したり、簡略化しようという方向で検討する余地は十分にあると思うんですけどね。

これだと長期的な企業価値向上にも繋がりますし、経理担当者も本来あるべき仕事に時間を向けることができるのではないでしょうか。