最新IFRS適用状況(2020年6月末)

本年も東証から「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の分析資料が公表されましたので、 昨年および一昨年に続き、 2020年6月末時点のIFRS適用状況をまとめました。

まず、IFRS適用会社数(適用決定会社及び適用予定会社を含む)の推移は、以下の通りになります(東証HPより筆者作成)

2020年6月末のIFRS適用会社数(適用決定会社及び適用予定会社を含む)は234社となりました。

2015年から2019年までは毎年30社前後のペースで増加していましたが、直近1年間は9社の増加に留まったことになります。

その主な要因は、やはり新型コロナウイルスによるものでしょう。出社が制限され、在宅勤務を余儀なくされた結果、現行基準の決算業務でさえ間に合わせるのに必死だったという会社が多いと思います。
そのような状況で、IFRS導入という大きなプロジェクトを並行して進めていくのはやはり難しいというのが実情ではないでしょうか。

現時点でもまだコロナの影響は残っていることを考慮すると、2021年6月末の適用会社数もこれまでの増加水準にまでは回復しないだろうと考えています。

一方で、トヨタ自動車や東レ、三井化学、日本航空といった各業種の大手企業が2021年3月期の第1四半期からIFRSを適用していることは、同業他社がIFRS導入を検討することに繋がるという点で、今後の増加のプラス要因になると思われます。

次に、2020年6月末時点のIFRS適用会社234社を業種別にグラフ化したものが以下になります(東証HPより筆者作成。棒グラフが適用社数(左軸)、折れ線グラフが各業種内の母集団に占める適用会社の割合(右軸)を示している)。

適用業種は前年に比べて1業種(建設業)減少とほぼ変わらず。業種間の会社数には偏りが見られるのも昨年と同様ですね。

情報・通信業やサービス業、電気機器で適用会社が多い一方で、銀行業や建設業、水産・農林業などは未だ1社も適用がありません。

また、各業種内の母集団に占める適用会社の割合を示した折れ線グラフを見ると医薬品が27%、ゴム製品が26%と高く、いずれも約4社に1社が適用しています。次いで、輸送用機器と空運業が20%で続きます。

適用実績から見ると、2020年6月末までの1年間は上記のような傾向が見られます。

最後に、IFRS導入支援を行っている実務の立場からお話をすると、やはりこの1年はコロナがIFRS導入中あるいは導入を検討している企業に影響を与えたという事実は否定できません。

もっとも、プロジェクトへの影響は業種によって大きく異なっている印象があり、例えば海外子会社が何十社とあるような会社では連携が上手く取れず進捗が遅れがちとなるケースが多いと感じています。
一方で、国内中心に事業を展開しているIT企業などでは、大きな影響を受けることもなく当初予定通りにプロジェクトを進めています。

今後は、テレワークを駆使しながら、これまで以上にいかに無駄な作業を省いてIFRS導入に必要な作業のみに注力することができるかが、円滑な導入のポイントになると思います。