9月7日の週刊経営財務にて、「「withコロナ」時代の経理・財務の働き方」というテーマの座談会の内容が掲載されています。
座談会には、IFRS導入支援の仕事を一緒にしている公認会計士の武田雄治先生と、セミナー講師として何度かご一緒している公認会計士の梅澤真由美先生が参加されていることもあり、ボリュームのある内容をじっくりと読ませていただきました。
以下に印象に残った言葉を、備忘を兼ねて抜粋します。
・「非効率な部分」が生じることが分かっていると,やはりそちら(テレワーク)には移行しづらいというのが一因だと思います。プラスになる部分があるとしても,マイナスもあるのであれば許容できないという傾向が日本企業には見られます(有限責任あずさ監査法人 公認会計士 紫垣先生)
・新型コロナによって,今回は強制的に出社できない状況に追い込まれましたから,不要なものをなくすことを考えざるを得なくなりました。その意味では,これは良いきっかけになったと思います(武田先生)
・会社全体として「変えられない」という固定観念があるのであれば,それを変えるためにはトップ・ダウンで「働き方改革を推進しよう」という姿勢が求められます(紫垣先生)
・「出社しないと」「紙じゃないと」「承認がないと」とか「監査も対面じゃないと」という常識は,令和の時代に昭和時代のやり方と考え方を引きずっているだけのように思えます(武田先生)
・テレワークをはじめとする業務の変更にあたって,より高い実行性を求めるならばツールの導入力が弱いのは欠点です。変えられる業務を変えられない会社は,こうした点も要因の一つになっている気がします(梅澤先生)
・本質的なテレワークをするのであれば,時間や業務内容で管理するのではなく,性善説に基づく人の管理をしなければならない。最近よく言われる“ジョブ型”への移行だとか,「成果を出せば何をしても良い」くらいの発想をしないと,どこかでテレワークの限界がくるでしょう。マネジメントを含めた抜本的な見直しが必要です(武田先生)
・「コロナは100年に一度だから」といって,収束したときに元の状態に戻す会社と,むしろこれを通過点として,そこから得た情報をもとにさらに2~3段階の進化を遂げる会社に分かれていくと思います(梅澤先生)
上記以外にも、特に経理や財務に携わる方々にとっては、今後の働き方を考えるうえで非常に参考になる箇所が多くあったと思います。
今回のような状況下で、特に大企業においては、セキュリティ上の問題などからITソフトを導入するにも最終的な承認までのプロセスに時間を要することが多く、ツール導入による有用性・効率性は理解していても導入や運用まで思うように辿り着かないという会社も多かったのではないでしょうか。
(私が関与している上場会社の子会社でも、一般的な某社の会計ソフトを導入するだけで複数の関連部門の承認を経る必要があるということから、結果的に数ヶ月の期間を要したことがありました。)
また、テレワークにより在宅で仕事をするためには、従来は必要のなかった自宅の環境整備や家族の理解が必要となるでしょう。
今回のコロナは突然かつ想定外の出来事であり、テレワークのための準備期間が短かったことを考慮すると、私の関与先である複数の上場企業でも比較的スムーズに在宅勤務に移行できたという印象です。
もっとも、想定外の事象であったが故に、多くの会社では可能な業務から順次テレワークに切り替えていくという流れであったと思います。
しかし、本来はまずは社内全体あるいは各部署において、ITソフトや人事面の評価体制、勤務方法などあるべき姿を描いたうえで、徐々にそのあるべき姿に向かって移行していくという流れをとることが望ましいと思います。
各社の決算業務が落ち着いた段階で、改めて自社の今後のあるべき姿を経営層が中心となって検討し「見える化」していく、そして「見える化」した姿に近づくよう行動していくことが求められるのではないでしょうか、