成長を急ぎすぎたとき、短期利益とガバナンスはなぜ両立しなくなるのか

1月28日、ニデック株式会社から「改善計画・状況報告書」が公表されました。

同社をめぐっては、2025年6月に予定されていた有価証券報告書の提出延期に始まり、その後も、会計監査人による監査意見およびレビュー結論の不表明、内部統制の重要な不備の指摘、さらには東証による特別注意銘柄の指定など、極めて深刻な状況が続いていました。

今回公表された報告書は、第三者委員会による調査報告ではなく、ニデック再生委員会が、取締役・執行役員および国内外のグループ役職員に対して実施したヒアリング結果を基に取りまとめたものです。

不適切な会計処理の疑義が仮に事実であった場合、その背景・原因分析と再発防止に向けた改善措置が整理されています。

報告書において、根本的な原因として挙げられている主な項目は、次のとおりです。

(1)成長を示し続けるための過度な株価至上主義
・元グローバルグループ代表(2025年12月19日付で辞任。現名誉会長。以下「元代表」といいます。)が株価を非常に重視しており、株価や株式時価総額の水準を維持・向上することを過度に重視する傾向が強かった
・当社の一部の経営陣から各事業本部・国内グループ会社に対して一日に数回も進捗管理や目標数値達成に向けた確認の打合せを要求することもあった

(2)短期的な利益を最優先し、目標未達を許容しない企業風土
・短期間に業績をあげるように頻繁に求められた
・短期的な業績に強く結びついた執行役員人事である
・執行役員の任期が短いことから、短期で業績を出すことが求められる

(3)元代表の意向を優先する風土
・元代表の意思を周囲の幹部が忖度していた
・元代表の承認を得ようとする文化であり、元代表に承認してもらうためにどうするかということに意識が向いていた

(4)ガバナンスの脆弱性
・事業に通じていない場合、社外取締役が事業リスクを適切に識別するのは困難である
・業務執行取締役・執行役員や担当部門から十分なリスク情報や事業実態に関する情報、議論の状況が取締役会に共有されていなかった

(5)内部統制の脆弱性
・内部監査が行き届いていない拠点がある
・業績会議では、事業本部・国内グループ会社の(第2線である経理部門を所管する)CFOが業績を厳しく追及されていた

(6)グループ会社管理体制の脆弱性
・グループ会社の数に対して、仕組みが追い付いていない
・買収企業に対して、統合作業より業績管理が先行している

これを読んで、「やはりそうか」と感じた方も多いのではないでしょうか。

内容そのものは、想定外というより「多くの人が薄々感じていた構造的な問題」が言語化された印象を受けます。

実際、私自身が上場企業向けにコンサルティングを行うなかでも、ワンマン経営による過度な目標設定、短期利益の過剰な追求、その結果としての管理体制・内部統制の軽視といった企業風土に直面することは決して珍しくありません。

現場の従業員は、多くの場合、問題に気づいています。しかし、声を上げられない。言っても変わらないと感じている。その結果、モチベーションや貢献意欲が徐々に低下し、優秀な人材から去っていく。残された人たちに過度な負荷が集中し、さらに士気が下がる。そして、ミスやエラーが増え、組織としての健全性が失われていく。。。

このような悪循環は、決して特定の企業に限った話ではありません。

組織として機能させる意思がないのであれば、最初から上場など目指さず、家族経営の規模にとどめておくという選択も、ひとつの合理的な判断です。

経営者は、企業規模の大小にかかわらず、従業員を雇い、組織として事業を運営すると決めた時点で、自己中心的な発想を抑え、メンバーの意見に耳を傾け、目先の利益ではなく長期の成長を求める思考へと転換する必要があるのだと思います。

今回の報告書の内容を「特定の企業の話」として片付けるのではなく、経営者自身が自らの経営をあらためて振り返るきっかけとして、一度目を通してみてはいかがでしょうか。