ニデックの品質不正は想定できたのか?

5月13日、ニデック株式会社は家電用モーターや車載部品などで、品質に関する不適切行為の疑いが判明した旨を公表しました(以下、公表資料より一部抜粋)

このたび、当社及びグループ会社が製造する一部の製品について、お客様の確認を受けずに行われた部材・工程・設計等の変更等の不適切行為の疑い(以下「本事案」)が判明いたしました。(中略)本日時点で、当社グループで検出された事案の大半(96.7%)は、お客様の確認を受けずに行われた部材・工程・設計等の変更となります。その他には、試験・検査データに関する不適切な取扱いや、生産地に関する不適切な表記等が確認されております。

顧客の確認を得ないまま部材や工程、設計を変更したり、試験・検査データを不適切に取り扱ったりしていた可能性があるとのことで、報道によれば現時点で不正の疑いは1,000件超にのぼるとされています。

会計不正に続き、今回の品質不正疑いの公表を受けて、「まさか、そこまでか」と驚いた方もいるかもしれません。

しかし、会計不正があった企業で品質面の問題も浮かび上がったという事実は、十分に理解できます。

むしろ、経営陣からグループ全体に対する過度な業績プレッシャーが会計不正の背景として指摘されてきた状況を踏まえると、品質面には問題がなかったと考える方がむしろ不自然ではないでしょうか。

ですので、私が今回のニュースを聞いたときの第一印象は「やっぱりか」でした。

今回のケースに限らず、製造などの現場では、納期を守るため、コストを削減するため、あるいは達成困難な目標を何とかするために、本来通るべきではない「抜け道」が選ばれることがあります。

顧客に無断で部材を変更する、工程を変える、検査データを都合よく扱う。

現場はやりたくてやっているわけではない。むしろやりたくない。しかし、社内の評価、人間関係、自分自身や家族の生活がある。さまざまな葛藤を抱えながら繰り返されることで徐々に常態化し、やがて広範囲化していく。

このように、ガバナンスが機能していない状態では、問題の発生は特定の部門や機能だけに留まりません。

組織全体の風土や文化として、「正しいことよりも、目の前の目標達成」が優先されるようになっている場合、不正などの問題は複数の領域に同時並行で発生します。

今回のニデックのケースで言えば、会計不正の調査が進む中で品質の問題まで浮かび上がったという経緯は、まさにその構造を示していると思います。

岸田社長は記者会見で「品質は製造業である当社グループの根幹であり、極めて重く受け止めている」と謝罪しました。

会計不正と品質に関する不適切行為の原因がいずれも過度な業績プレッシャーだとするならば、再発防止策もそれに対処するものでなければなりません。

不正が発覚すると、すぐに内部統制に問題がある、内部統制が原因だと語られることがありますが、私はその考えはあまりにも短絡的で危険だと思っています。

誤解を恐れず言えば、内部統制という言葉が声高に語られることで、「内部統制が整っていれば企業に不正は起こらない」という誤った思い込みを生んでいるのではないかという危惧さえあります。

今回のケースをみても、表面的な内部統制の整備・運用だけでは改善として不十分なのは明らかです。

もっと大きな視点である「組織風土そのものを変えられるか」が再発防止のために重要なのだと思います。