ニデックの会計不正問題に関する第三者委員会の調査報告書が公表されました。
調査報告書によれば、第三者委員会によるヒアリング対象者は337名、延べ612回にのぼります。私も第三者委員会のメンバーとして企業の不正調査を行った経験がありますが、この数字からも今回は非常に時間をかけた慎重かつ徹底した調査であったことがうかがえます。
今回の報告書では、ニデックグループの多岐にわたる拠点で、棚卸資産の評価損未計上、固定資産の減損回避、人件費の計上時期の先送りなど多数の会計不正が発見されたとされています。
2025年度第1四半期までの累積的な影響として、売上高▲331億円、営業利益▲1,664億円、当期利益▲1,607億円の影響があったとのこと。
デカすぎますね。
第三者委員会は、調査により発見された会計不正について、業績目標の達成に向けた強すぎるプレッシャーを背景に行われたものと整理しています。
また、グループ内で、長年にわたり「赤字は悪である」との考え方が徹底され、業績目標が必達のものとして捉えられていたとのことです。その目標は、投資家目線でどの程度の成長が求められているかという観点から決められたものであり、事業部門や子会社の実力を超えるものだったと。
さらに、営業利益目標を達成していない子会社幹部に対し、徹夜をしてでも営業利益を捻出するよう指示を行ったという事例も記載されています。そのような強いプレッシャーの中で、不正な会計処理によって、業績目標を達成しようとする事業部門や子会社も少なくなかったようです。
高い目標を掲げること自体が悪いわけではありません。むしろ、企業が成長を続けるためには高い目標の設定は必要でしょう。
しかし、その目標が現場の実力を超え、かつ「未達は許されない」という空気の中で運用されると、会計処理そのものを歪める方向に作用してしまう。
今回の報告書を読むと、現場責任者や担当者が、強いプレッシャーの中で追い込まれていく様子が伝わってきます。
一般に、不正を起こす企業では内部監査部門の脆弱さが指摘されることがあります。
もっとも、報告書において、会計不正への牽制という意味では、その指摘はニデックの内部監査部門には直ちには当たらないとしています。ニデックでは、外部から公認会計士を採用するなどして人員を増強し、内部監査部門に会計監査を行う部署を設置していたようです。
つまり、形式的には、会計不正を発見・牽制する体制がなかったわけではありません。
しかし、制度や体制が存在することと、実際に経営に対して必要な牽制が働くことは、まったく別の問題なのです。
企業の成長を図る観点では、研究開発、設備投資、M&A、新規事業、営業などへの直接投資が注目されがちです。もちろん、それらは非常に重要な投資といえるでしょう。ニデック自身も、M&Aなどを通じて事業領域を拡大してきた代表的な企業だといえます。
一方で、成長を支えるためには、経理、財務、法務・コンプライアンスといった管理体制が十分に機能している必要があります。
経理部門や内部監査部門が、経営層に対して言うべきことを言える権限を持っているか。強いプレッシャーがかかったときでも、正しい会計処理を守れるだけの独立性や発言力を有しているか。
そこまで含めて、初めて管理部門が「機能している」といえるのだと思います。
管理機能が十分に働かず、その歪みが会計数値として表れたとき、企業が失うものは利益だけではありません。投資家や取引先、従業員からの信頼すら失うことになります。
利益獲得に向けた直接的な投資と、管理部門への投資。
これは、どちらか一方を選ぶものではなく、やはり車の両輪として扱うべきものなのだと思います。
この点に関連した余談として、以前の投稿「経理部門を軽視していないか」でも書いたように、私は、管理部門を単なるコストとして見る考え方に違和感があります。
経理部門などを「コストセンター」と呼ぶ風潮がよくないのではないかと思うのです。
管理部門の従業員も、企業の成長のために十分貢献しているのに、それを「コストセンター」って。
この言い方、もうやめませんか。
現場の皆さんのやる気、なくなりまっせ。

