本日の日本経済新聞朝刊によると、金融庁はプライム上場企業を対象に、温暖化ガス排出量の開示を義務づける検討に入るようです(以下、記事より一部抜粋)
金融庁は東京証券取引所プライム上場企業を対象に温暖化ガス排出量の開示を義務づける検討に入る。自社分だけでなく調達・輸送などの取引先を含む排出量について国際基準に沿った開示を求める。投資家が同じ基準で比べられるようにし、企業に脱炭素に向けた取り組みを加速するよう促す。
(中略)
金融審の分科会では有価証券報告書で開示を義務づける企業の範囲や開示形式などを議論する。まずは海外投資家からの開示要請に応えるためプライム上場企業約1600社のすべてか一部にする方針だ。約4000社ある上場企業すべてに適用するとスタートアップや国際的に事業展開していない企業も含まれ、開示の負担が大きいためだ。
国際基準では、温暖化ガス排出量についてスコープ1から3までの開示を求めています(以下の表は、環境省HPより抜粋)。
上表のスコープ1は事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)、スコープ2は他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出、そしてスコープ3はスコープ1、スコープ2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)を表しています。
つまり、自社のみではなくサプライチェーン全体での排出量はいくらかを示すことが求められているのですが、自社に該当する部分はまだなんとかなるとして、その上流や下流の排出量まで算出するのは相当な作業負担になることが想像できます。
たしかに温暖化ガスの排出は世界的にも問題になっており、それを減らす必要があることに私も異論はありません。国際基準に合わせて国際的な比較可能性を担保することも重要でしょう。
しかし、すべてのプライム上場企業で有報に開示を義務付ける必要まであるのでしょうかね。
有報への開示を義務化するということは、それが投資者の意思決定に重要な影響を与えるからなのでしょうが、温暖化ガスの排出量まで意識している投資者の割合はそんなに多いんでしょうか。
個人的には、実務者の作業負担の観点からも開示自体を任意する、あるいは開示は義務化するとしてもスコープ3の算定・開示は任意にするところから始めてもいいと思うのですが、いかがでしょうか。