最新IFRS適用状況(2022年6月末)

7月22日に東証から「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の分析資料が公表されましたので、2022年6月末時点のIFRS適用状況を本年もまとめてみました。

まず、2014年6月末以降のIFRS適用会社数(適用決定会社及び適用予定会社を含む)の推移は、以下の通りになります(東証HPより筆者作成)

2022年6月末のIFRS適用会社数(適用決定会社及び適用予定会社を含む)は264社となりました。

2015年から2019年までは毎年30社前後のペースで増加し、2020年と2021年はいずれも9社の増加に留まったものの、2022年6月末までの一年間は21社の増加ということで、またコロナ前の水準付近まで回復してきました。

2020年と2021年の増加が9社に留まった点については、昨年の最新IFRS適用状況の投稿で、「リモートワーク中心ではIFRS導入のような大規模なプロジェクトを進めることが難しい、あるいは強制適用ではないIFRSの導入は、いったん優先順位を下げているということもあるだろう」と記載しました。

一方、2022年にかけては、出勤者数の回復やコロナ環境下における業務の適応が進み始めたこともあって、IFRS導入プロジェクトがまた動き出したのだと思います。

次に、2022年6月末時点のIFRS適用会社264社を業種別にグラフ化したものが以下になります(東証HPより筆者作成。棒グラフが適用社数(左軸)、折れ線グラフが各業種内の母集団に占める適用会社の割合(右軸)を示している)。

適用業種は33業種中28業種となり、前年から建設業の1業種が増えています。業種間で会社数に偏りが見られるのはこれまでと同様ですね。

情報・通信業やサービス業、電気機器で適用が多い一方で、銀行業や海運業などは未だ1社も適用なし。特に、海運業やパルプ・紙で適用がないのは不思議です。

また、各業種内の母集団に占める適用会社の割合を示した折れ線グラフを見ると、医薬品とゴム製品がいずれも20%台後半と、およそ4社に1社が適用している状況です。次いで、空運業と輸送用機器が20%程度で続きます。

2022年6月末までの1年間は、上記のような適用実績となりました。

最後に私見を述べておくと、現在はまん延防止等重点措置も解除され、在宅勤務から出社への回帰の傾向が見られますが、依然としてリモートワークを推奨・容認している会社も多く、これまでにも増して効果的かつ効率的なIFRS導入プロジェクトの実施が求められる環境へと変わってきていると思います。

実際、私と武田雄治先生との共著「先行開示事例から学び取る IFRS導入プロジェクトの実務」(中央経済社)が本年に入って増刷されているのは、無駄な作業をなるべく排除した「ゴール逆算方式」での進め方が、現場でも徐々に受け入れられ始めている結果だと思います。

これから特に重要となるIFRS導入のポイントは、同じ部署やチーム、他部署、親子会社間のメンバー、外部の専門家、監査法人と連携を取りながらストレスや滞りなく業務をこなしていけるか、つまり「リモートワークでも対応できる円滑かつ柔軟なコミュニケーション方法の確立と実行」と、いかに無駄なコストや作業を省いて効果的かつ効率的に導入を進めていけるか、つまり「ゴール逆算方式によるIFRS導入プロジェクトの実行」にあると個人的には思っています。