今朝の日本経済新聞に、東京証券取引所が投資家向け広報(IR)の体制整備の義務化に向けて動き出した旨の記事が掲載されています(以下、記事より一部抜粋)。
東証は今夏にも上場企業が従うべきルールを定めた「企業行動規範」にIRの担当役員や担当部署の設置、説明会や資料の充実を盛り込む方針。日本IR協議会の調査によると、上場企業の4割弱はIR専任者を置いていない。体制強化を迫られる企業は少なくない。
近年は気候変動など投資家に向けた情報開示の拡充が図られていることに加えて、個人投資家の増加に伴う問い合わせ件数の増加に対応するなどの目的で、すでにIRに力を入れている会社も多いと思います。
もっとも、私がこれまで関与してきた上場企業を鑑みても、現状はIRの専任者や担当部署までは設置せず、経理部門や広報部門の方々がIRを兼務しているという会社も多いのではないでしょうか。
東証によるルール策定の詳細はこれからのようですが、IRの担当役員や担当部署の設置を義務付けるとなると、上述のようにIR対応を兼務で済ましている会社では対応が求められることになると思われます。
私見として、上場企業であれば従来からIRに対応するべく兼任の担当者は置いているかと思いますので、今後はIR担当役員を1名選ぶとともに、IR部署を設置して部長を1名置く。担当者は1名専任か、ひとまず兼務として、あとは説明会や資料の充実が具体的にどの程度の濃さで盛り込まれるかに応じて担当者を増加させることを検討すれば十分ではないでしょうか。
なお、日本IR協議会によると、現状は専任者ゼロと1名を合わせて6割程度を占めるとのことです。偶然か否か、この割合はプライム上場企業以外の上場企業の割合と概ね一致します。
プライム上場企業ではすでに複数名の専任者を置いている可能性が高い。一方、プライム上場企業以外の上場企業では、現状はこのくらいの規模感だということをまずは認識したうえで、慌てることなくルールに対応していけば、今回の義務化による大きな混乱は生じないのではないかと感じています。