「コンサルタントは魔法使いではない」

事業または財務状況の改善に係るコンサルティングの依頼や相談を受けた際に、経営者の方によく聞かれる質問があります。

「先生、会社の状況を短期間で大幅に改善できるような方法を教えてください」

私がこれまでに事業の改善や再生のコンサルティングに数多く関わってきたことから、会社の業績をまたたく間に改善させるような、何か特別な方法を駆使していると思っているのかもしれません。

しかし、私の答えは期待を裏切るものになります。

「残念ながら、私は魔法使いじゃありません。そんなウルトラCがあるのなら、私も教えてほしいです。」

例えば、借入過多の場合に、リスケや債権放棄によって財務状況が一気に改善することはあります。しかし、それはあくまで一時的。赤字でキャッシュを垂れ流し続けているような状態では、また以前と同じような状況に戻ってしまいます。

会社が将来にわたって継続的に業績を改善していけるかどうかは、経営者や従業員が地道にやるべきことをやれるかに尽きると思います。

「そんな地道で当たり前なことをしていて業績を改善できるのか」と心配になるかもしれません。しかし、改善できずに低迷・倒産していく会社の多くは、地道で当たり前のことができなかった会社ではないでしょうか。

5年前に大幅な債務超過で倒産寸前だった状況で支援に関わった会社が、原価管理を導入し加工時間を徹底的に管理することで、現在は当期利益率が20%を超えて債務超過も解消し、逆に金融機関からお金を借りてくれないかと言われています。

このままでは半年先には倒産しそうだと相談を受けた会社は、その後3年以上経過した現在でも存続しているとともに、資金繰りは大幅に改善し、本業に神経を集中できるようになりました。

複数の事業を抱えるも業績が低迷していた会社は、何度も将来の方向性の具体化に向けて話し合いを重ね、事業の選択と集中を行ったことにより、いまやテレビや雑誌にも数多く取り上げられ、店頭に行列ができるほどにまで知名度が上がっています。

上記は一例ですが、いずれも私のことを心から信頼していただき、改善の提案を経営者と二人三脚でこなしていく、地道な行動の結果として生まれたものです。

そして、業績が改善した今でもなお継続して様々な提案をさせていただいていますが、各社の経営者は決して慢心することなく自ら検討、判断し、行動されておられます。

成功のためのウルトラCはありません。

「雨垂れ石を穿つ」

経営者は自分自身や従業員、助言をくれる専門家を信頼して、一歩また一歩と前に進み続けるしかないのです。