日本経済新聞朝刊に、「<Deal Makers> M&A最前線」という記事が8月20日から4回にわたって掲載されています。
架空のドラッグストアの株式非公開化を題材に、買い手探しや買収プロセス設計から、1次入札、デューデリジェンス(資産査定)、そして買い手決定、TOB公表までを、FA(財務アドバイザー)や弁護士、ファンド、コンサルタントといった「黒子」の視点を中心に追う構成です。
読んでまず感じたのは、これからM&Aの実務に触れる方や触れて間もない方々にとって、非公開化までの流れがイメージしやすく、端的にまとめられているということです。
毎回同じプロセス図が置かれ、今どの段階の話をしているのかが一目で分かるように配慮されています。
1次入札への参加企業が絞られていき、DDを経て価格が動き、最終的に1社が優先交渉権を得る。その過程における人の判断と駆け引きについても意識して書かれているのが分かります。
少し気になった点としては、実務を知らないと架空の企業と実在の企業のどちらか見分けにくいかなと。
「NKリテイリング」「スズマユキャピタル」「ヒダカドラッグ」「ニッケイ証券」はいずれも架空の企業で、記事にもその旨は明記されています。それでも社名の付け方が絶妙にリアルで、しかも同じ紙面に実在のファームや専門家のコメントが並ぶため、架空と現実の境界が曖昧に見えるかもしれません。
なお、その専門家のコメントの中には、私が以前勤務していたKPMG FASの名前もありました。こちらは実在です笑
第3回のDDの場面では、営業利益率が極端に低い店舗に目を留め、欠品率の異常に気づき、人材紹介会社を通じてOBに接触して現場の実態を聞き出す。原因は属人化された現場の運用にあった。これはAIの活用で解決可能だ。そうやって「改善余地」を突き止めたからこそ、買収価格を引き上げる判断ができた。DDが価格に直結するという関係が描かれています。
第4回では、買い手を決定するための材料として、成長投資の方針やPB(プライベートブランド)の委託製造契約に潜むリスクまで比較したうえで結論に至っており、決して価格の高低だけで決まるわけではないという実務的な判断過程も参考になるでしょう。
今回の連載では、買い手探しから非公開化までの流れが滞りなく進んだように書かれています。
しかし、実際のDDや買収価格の決定過程においては、限られた時間で詳細かつ膨大な調査・分析が行われ、重大な意思決定局面では専門家らを交えて何度も意見をぶつけ合う行うことになります。
次回は、このあたりの話にスポットを当てたストーリーを期待したいと思います。

