のれん定期償却か非償却か ー 公聴会で求めるべきは「新たな根拠」ではないか

企業会計基準委員会(ASBJ)は昨日、M&Aで生じる「のれん」の会計処理に関する8回目の公聴会を開催しました。

昨年の8月に始まった公聴会も、はや8回目となります。

今朝の日本経済新聞によれば、企業関係者からは「のれんの償却・非償却の違いはM&Aの意思決定に影響しない」との声が相次ぎ、日本基準でのれんを非償却とする案については「支持しない」とする意見が多かったとされています。

現在、日本基準では、のれんは20年以内の効果の及ぶ期間にわたって規則的に償却する一方、IFRSではのれんは償却せず、毎期減損テストを実施するという差異が存在しています。

のれんの償却と非償却、それぞれの理論的な根拠について、簡潔に整理してみます。

■ 償却を支持する立場
・のれんは将来収益力への期待であり、時間とともに費消する
・規則的に費用配分することで期間損益計算の適正性を確保する
・減損テストには経営者の主観が介入する余地が大きい

■ 非償却を支持する立場
・のれんの耐用年数を合理的に見積もることは困難
・機械的な償却は企業価値の実態を必ずしも反映しない
・減損テストによる回収可能価額の測定の方が経済的実態を表しうる

こういった主張はこれまで何度も取り上げられているため、公聴会で既存の根拠が繰り返し提示されても、会計処理の変更に直結する議論にはならないと思います。

非償却への変更は、財務数値や経営指標、減損判定プロセス、システム対応など、広範な実務への影響を伴います。

その影響の大きさを考えると、非償却に変更するだけの十分かつ新たな根拠があるのか変更により生じるコストや混乱を上回るだけの便益があるのかという目線での検討が必要であり、それらがないまま基準を変更することには慎重であるべきでしょう。

8回にわたって幅広い関係者を集めて意見を募った結果、償却派と非償却派がそれぞれ存在しているのは分かりました。

もう十分じゃないかという気はしていますが、もし今後も公聴会を開催するのであれば、これまでと同様に幅広い関係者を集めて意見を聴くという形式ではなく、

・これまでに語られていない新たな根拠
・これまでに語られていない実務上の具体的な問題点

を提示できる関係者を募集して意見を聴く、という場にしたほうが有意義だと思います。

現行の処理から非償却に変更すべきだという新たな根拠が示されないかぎりは、日本基準は現行どおり定期償却を維持し、非償却を望む企業はIFRSに移行するという整理で足りると、私は考えます。

よほどの大企業を除いて、IFRS移行には数億円もかかりませんので。