IFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」の損益計算書における区分及び小計について整理してみた

本日の日本経済新聞朝刊に、「国際会計基準、「営業利益」ルール統一」および「国際会計基準、損益計算書3区分に 営業・投資・財務」という記事が掲載されています。

久しぶりにIFRS関連記事が一面を飾った気がしますね笑

この点、国際財務報告基準(以下、「IFRS」という)を策定するIASBの見解を踏まえて、IFRSの導入支援を行っている私の立場から、記事に掲載されていない内容も含めて少し解説してみたいと思います。

まず、IFRSを適用している企業の半数以上は損益計算書において「営業利益」を開示していますが、この「営業利益」の定義や計算方法は各社に委ねられていました。
(IASBの話によると、営業利益の開示をしている企業は6割程度あり、営業利益の定義は少なくとも9通りは存在したということです。)

そのため、投資家にとっては業績や経営指標について企業間の比較可能性が損なわれているというのが実情でした。

そこでIASBはこのような現状を改善するべく、IFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」を本年4月に公表しています。

IFRS第18号では損益計算書以外についても新たな要求事項を求めていますが(こちらについては先日の投稿「IFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」の3つの要求事項について私見を交えて」を参照ください)、そのなかで損益計算書における区分及び小計として以下を規定しています。

■ 損益計算書の構造を一貫させる3つの定義された区分
・営業、投資、財務
■ 分析を可能にする2つの新たな小計の要求
・営業利益、財務及び法人所得税前純利益

その結果、当該規定を踏まえた損益計算書としては、概ね以下のような構造となります(IASB作成資料をもとに筆者作成)。

これにより、営業利益はあらゆるビジネスモデルに対応するとともに、持分法による投資損益を除いた企業の営業活動から生じる利益を示し、財務及び法人所得税前純利益は財務活動など資金調達の影響を除いた企業の業績利益を示すことになります。

先日、IASBのニック・アンダーソン理事の話を直接伺える機会に恵まれましたが、その際に話された言葉で私が特に印象的だったのは、「財務諸表は企業と投資家のあいだのコミュニケーションツールだ」というものです。

企業が多大な時間をかけて財務諸表やそれに付随する情報を作成・開示しても、定義や計算方法、開示の方法が曖昧であれば、投資家は企業の状況を適切に理解したり、企業間で比較することが難しくなります。

開示に関する統一的な指針が新しくできたことで、財務諸表がより有用なコミュニケーションツールとして発展を遂げる可能性があることを私自身前向きに受け止めています。

私が現在IFRS導入支援で関与している企業でも当然対応が求められますので、IFRS第18号についても引き続き、担当者の皆さまと二人三脚で導入の準備を進めていきたいと思います。