収益認識基準適用の支援事例から伝えたい、「余裕を持った検討を!」

2021年4⽉1⽇以降開始する事業年度の期⾸から収益認識基準の強制適用が始まっています。

これまでに複数の会社の適用支援や助言対応を行ってきて感じるのは、売上規模が比較的小さく単一事業しか行っていないような会社が、意外にも期限直前になって監査法人から修正や指摘を迫られているということです。

これは、「自社は単一事業だし複雑なビジネスモデルでもないから適用しても影響はないだろう」という思い込みが一因だと感じています。
(複数の事業を行っていたり、複雑なビジネスモデルの場合は当然適用の影響はあるという前提で早めに準備を進めているので、間に合うケースが多い。)

収益認識基準は検討すべき論点が多く、単一事業やシンプルなビジネスモデルでも何らかの論点が自社にも該当し、影響が生じるという可能性は十分に考えられます。

自分の会社には影響ないだろうという意識ではなく、おそらく何かの論点は影響するだろうという前提意識に切り替えていただいたほうがよいと思います。

以下、参考までに、適用支援の現場で直面した事例を掲載しておきます。

上場会社の連結子会社で収益認識基準を適用することになった。親会社からチェックリストが送られてきたが、具体的な検討をせず自社は子会社だし大きな影響はないだろうと考えて「影響なし」という結論を経理担当者が提示してしまった。その後、決算作業にて、実は収益認識基準の影響を受ける可能性が高いことが判明。しかし、親会社には影響なしという報告をしてしまったため、どう対応すればよいか助言がほしいと支援依頼あり。

収益認識基準が適用されても、従来どおり収益は総額計上で問題ないと考えていた経理部長。以前から私が継続的に関与していた会社のため、何度も詳細な検討を勧めたにもかかわらず、経費削減の社内方針もあって検討は不要と判断。しかし、決算作業直前になって監査法人から純額計上へ変更すべきではないかとの指摘があったため、なんとか総額計上で進められるよう理論武装できないかという支援依頼あり。

いずれも「こんなところでコスト削減を図らず、早くから相談していればよかった」と言われましたが、実際に期限ギリギリでは対応できることに限界があります。

そして忘れてはならないのは、いったん収益認識基準に沿った会計処理を適用してしまうと、その後の期も同じ処理を継続することになるということです。

そのため、収益認識基準の適用では、最初の段階でいかに理論武装して自社が考える処理を適用できるかが重要なポイントになります。

直前になってバタバタと慌てないためにも、収益認識基準を適用すると自社に影響があるという前提で適用スケジュールを組むことを強くオススメします。