IFRSで、のれんが償却になる可能性は?

9月14日(金)の日経1面に、IFRSにおいて、のれん償却の実施を検討する旨の記事が掲載されました。

当該記事を読んで、「IFRSでものれんを償却することになるのか」、「IFRSに変更するメリットが薄れるのではないか」などと思われた方もおられるでしょう。
また、今回の記事について、何件かお問い合わせや質問もいただいております。

この点、のれんを償却するか否かという話は今に始まったことではなく、以前から大きな論点として度々議論が行われてきました。

いずれの立場からも明確な根拠があり(というよりも、相手の主張が正しくないから自分の主張が正しいんだ、というような消極的根拠と言ってよいと思います)、どちらが理論的に優れているという結論がなかなか出ない論点のひとつです。

そのため、現状でもIFRSや米国基準はのれんを非償却とし、日本基準はのれんを償却するという異なる会計処理を求めています。

今回、IFRSでものれん償却の実施を検討し始めるとはいえ、現状のIFRSが求める非償却の処理にも当然に一定の根拠が存在しますし(なので、これまで非償却という処理を求めていたのは言うまでもありません)、IFRSがのれんを償却する立場に転換するには、経済界からの反発およびIFRS設定主体であるIASB内部の根強い反対意見に理路整然とした対応が求められるとともに、米国基準との整合性への配慮も無視できないでしょう。

まだ検討段階であり、今後の動向を注視したいとは思いますが、上述の点から今回の議論をもって最終的にIFRSがのれんの償却に全面転換する可能性は低いのではないでしょうか。

(万一、今回IFRSでものれんを償却する方針に変更したとしても、その後「やはりのれんは非償却に変更すべきだ」という議論が再燃するんでしょうね。双方が納得するような唯一の解決策の提示は難しいですから。。。という感じで、今回のニュースは比較的冷静に受けとめております。)